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Ayabex

■ 怒りに満ちた女郎グモ

わたしは、楽しいことをするのも大好きですが、自分の嫌がることをするのも大好きです。

今日も、わたしはわたしに、怖い思いをさせる遊びをすることにしました。

まず、おうちのソファでくつろいでいるとき、意思をもった細いなにかが頬をゆっくり撫でるのを感じて首を回すと、おなかの赤い大きな女郎グモが肩に乗っていた、というイメージをリアルに想像してみました。「ヒィーッ!」となりました。

これは、とても嫌です。怖いです。今日はこれをもっとやりましょう。楽しい思いつきに、わたしはウキウキしています。

トイレのドアを開けると、巨大な女郎グモの胴体がみっしりと詰まっています。 女郎グモは、トイレの中で窮屈そうに折りたたんでいた長い脚をゆっくりとドアからだして、カリカリと廊下を引っかきました。

ヒィーッ! ヒィーッ!

夢の中で絶叫しているのに声がでないときってあるでしょう? あんな感じで出ない声を必死で出そうとしていると、喉の奥に違和感。とがったものが喉にささって、反射的に「オエッ」とえずくと、喉の奥にあった、まあるいものが押しつぶされて、ぷちり。 わたしの口のなかからは、女郎グモだった生臭くて苦いものがどろどろと流れ出してきました。

ヒィーッ! ヒィーッ!

胃が裏返しになるくらい吐きつくしたあと、タオルで顔をぬぐいました。 タオルの裏側には、女郎グモのこどもたちがびっしりと張りついていて、もぞもぞしていました。

ヒィーッ! ヒィーッ!

タオルを放り投げて、頭をかかえて小さくなって震えていると、髪の毛の手触りがおかしなことに気がつきました。 髪の毛が、眉毛が、まつげが。体毛という体毛が、すべて女郎グモの脚になって、ゆっくりとうごいているのです。

ヒィーッ! ヒィーッ! ヒィーッ!

それでもわたしは、わたしが恐怖のあまり気を失うのを許すわけにはいきません。

逃げるな。逃げるな。 わたしはわたしを逃がさない。

しばらくして、飽きたわたしは、大好きなキウイ味のアイスを食べて、おしごとをしました。もう、クモは怖くありません。

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